王永徳、王国潼、魯日融、劉長福、キャラが立ち過ぎの4人の大師によるマスタークラス。二胡界の四天王揃い踏みといった風情です。
王永徳老師の江南紫竹講座。「題材は行街」。四天王中ただ一人マイクも使わず楽々声を張り上げ、いつものハイテンションで江南紫竹の特徴を説明、学生の演奏を手直しして行きます。
時々テンションが上がりすぎて上海語が混ざると、客席のお偉いさん方から「分からんぞ〜!」とツッコミが入ってなんだか微笑ましい。
王先生が、江南紫竹をよく弾く男子学生を舞台に呼び、二人で模範演奏をされた時には、中央音楽学院の劉長福先生や、今をときめく著名演奏家、鄧建棟さんまでスマホを掲げて動画を撮っていらっしゃいました。
短い休憩を挟んで、王国潼先生。曲は劉天華の「燭影揺紅」。
今朝から少し喉がいけないとのことで、水筒ご持参。体を正面をから外し、わざわざ横を向いて飲まれるご様子からも、品の良さがにじみ出ておられます。
学生にまず曲の内容を説明させます。一瞬戸惑いながらも臆することなく、曲の背景、解釈をしっかりした口調で述べる様はさすが。
学生からは「3/8拍子」「舞踏」「紅」といったキーワードが挙がりましたが、王国潼先生は、一般に信じられているその解釈を、実はそうではなかったはずだ、と時代考証を基にした深い考察を展開されました。
「燭影揺紅」という題名は、一種の曲牌で、内容とは関係ないんですって。初めて知った!
「今日は私の考えを述べましたが、是非明日の討論会でご指摘をください」と結ばれ、やっぱり最後まで上品でした。
メモを一生懸命取っていたら、王国潼先生だけ写真を撮り忘れて無念!
午後の一人目、魯日融老師。陝西の曲調を題材に、数々の印象的な名曲を物された先生です。テキストの作曲、編曲者のところで名前を親しく見るだけで、鳴尾の中では歴史上の人物とさして変わりがなかったのですが、目の当たりにしてみると、王永徳先生と同じ種類のエネルギッシュさで、全然過去の人じゃなかった(≧∇≦)
題材は「秦腔主題変奏曲」、魯老師の編曲で、私も大好きな曲。
印象としては、頭脳明晰。四天王中最高齢かとお見受けするのに、曲の来歴など話す時も年代までスラスラよどみなく、ただ一人プロジェクターを使ってパソコンで作った資料を示し、失礼ながら過去の人と思い込んでいたのでギャップが大きすぎました^^;
とはいえやはり情熱的で、持ち時間はるかにオーバーしているのに熱弁とどまるところを知らず。学生への弾き方の指導も、その正真正銘のオリジナルを目の当たりにできる幸運に、興奮してしまいました。
そして最後を締めくくるのは北の長、劉長福老師。
押出の良い長身に巻き舌の北方訛り、お偉い感じでとっつきにくい方なのかと想像していましたが、全然違いました。「魯先生の後に話すのは嫌だなあ、僕の方が先なら良かったのに」とぼやきながら始まった講義、子どもの頃のいたずら話やジョークを交えながら進んでいきます。
王永徳先生は、上海音楽学院の学生たちのお父さん的面倒見の良い雰囲気が満ち溢れているのですが、劉長福先生もなんだか北京のお父さんに見えてきました。
曲は今回のコンクールに名を冠される、流浪の芸人、孫文明の「流波曲」。指法弓法、52351から始まり52351で終わるこの曲の流れを、改めて教えて頂きました。
北京、上海、香港、西安、地域は違えど、激動の時代をくぐり抜け、二胡を守り後世を育ててきた大師達の連帯感、劉天華初めとする近代二胡の始祖達から受け継ぐ使命感、尚も衰えることのない中国民族音楽への情熱を感じることができました。
伝説的四大師達の講義を目の当たりにし、お腹いっぱい、満足感いっぱいの鳴尾の、後で気づいた大変な失策。
実はこの日の夜にもコンサートがあったのですが、この日はマスタークラスだけとなぜか思い込んでいた鳴尾、完全に聞き逃してしまいました。
名だたる若手演奏家の色んな形式での重奏のコンサートだったのに!
昨日夜遅くに上海入りした森敦志にも、「これを聞き逃すなんて...」と言われました。3ヶ月くらい引きずると思うので、そっとしておいてください...orz